ドラクエのモブに教わる生き方って何?! 『ドラゴンクエスト11 』推しを語る
『……だってボクの人生は、ボクのためにあるんだからね!』
この一文は、超大作ゲーム・『ドラゴンクエスト11 過ぎ去りし時を求めて』(発売元:スクエア・エニックス)で僕が一番好きなセリフだ。
このセリフだけを聞いても、多くの人はどのキャラクターがいつ放ったセリフであるか分からないだろう。
何故ならこれは、ほとんどモブのような立ち位置のキャラクターが放ったセリフだからだ。
【※以下、本編のネタバレ注意!※】
※ちなみに僕はドラクエ11Sをお恥ずかしいことに未プレイなので、あくまで11の話をしております。何か異なる部分があったら、僕にこっそり教えてください。
マスク・ザ・ハンサムくん。
グロッタの仮面武闘会にて、主人公の仲間であるシルビアさん(というかシルビアさん扮するレディ・マッシブさん)とコンビを組んだ男だ。
金色のサラサラとした髪と長い睫毛に彩られた涼しい瞳。登場したばかりの彼からは自分は儚げな印象を受けた。そんな彼は「美しきカリスマ闘士」と称され、武闘会初出場にも関わらず多くのファンに囲まれていた。
しかし彼は試合前、少しばかり弱気になっており、本当の自分など誰も求めてくれないとぼやいていた。
彼は人一倍誰かの期待に応えねばという気持ちが強く、そのせいで苦しんでいる。しかしそれを「皆が本当のボクを見てくれないのが悪い」という風に、他者のせいにしてしまうような小ささを持ってしまっている人物だ。本当の自分自身を見ようとしていないのが、自分そのものだと愚かしくも気づかずに。
しかしながら彼は、武闘会でシルビアさんとタッグを組んだことで世界が変わった。
シルビアさんのアドバイスを受け、彼はいっそ好き勝手に暴れ回ってやろうと思えたのだ。
薄幸な青年を演じていた彼が、元気いっぱいに舞台上を飛び回り、大声で叫び散らし、ちょっと頭の悪そうな……じゃなかった、とても楽しげなキメポーズをかましてみたのだ。
戦闘中の彼は賑やかで、喧しくて、それでいてとても生き生きしていた。
このときの様子を、同じく主人公の仲間であるセーニャちゃんは「奇妙な方」と表現した。柔和な彼女がそんな反応をするとは、よっぽど驚いてしまったのだろう。
主人公のペアになったハンフリーさんもこのコンビを「賑やかな人たち」と称していた。
仮面武闘会が終わった後、彼はダンスの才能を見出され、グロッタのステージで踊り子として活躍するようになった。元気いっぱいに踊り狂う彼に、かつてのファンは「幻滅した」と言って離れてしまう。
そのことに関して彼がしたコメントこそが、冒頭の一文を含んだこのセリフ。
『そりゃあ最初はボクだって本当の自分を見せるのはためらったさ。それでいろいろ失ったものもあるしね……。だけどもう踏んぎりがついた。自分にはウソをつきたくない……だってボクの人生はボクのためにあるんだからね!』
彼は自分自身を大切にしようと、ようやく思えるようになったのだ。
自分自身を大事にできない人が、他者を大事にできるはずがないのだ。だからこそせっかく自分を好きでいてくれるファンに「本当の自分を見てくれないあんたらは駄目だ」と詰るような態度を取ってしまっている。
このセリフには彼の成長が二つ隠れていると僕は思っている。
まずひとつは、「ファンを詰らなくなった」という点。
かつての彼なら幻滅して離れていったファンを「駄目なやつ」とでも称してしまっていただろう。けれど応援するも幻滅するも彼女らの自由であると気づき、何も言わないという選択を取ることができたのだ。
この幻滅したファンはけっこう鬼畜で、ハンサムくんの目の前で「幻滅したわ」と言い、大会の優勝者(=主人公)に対して「今度からあなたのファンになるわ!」と言う。かなり復讐的な言動である。しかしそれに動じないのがハンサムくんの成長ポイント。
そしてもうひとつの成長は、「ボクのための人生」だとわかっているという点だ。
他者からの評価に依存的な彼のままであれば、「ボクの人生はシルビアさんのためにある」と言ってしまったことだろう。
シルビアさんとペアを組めると知った直後は「シルビアさんに一生ついていく」と言うし、大会が終わった直後も「口を開けばシルビアさんの話ばかり」と言われてしまっている。今度はシルビアさんに依存してしまうのだ、と考えてしまうのも当然のことだろう。
しかし彼は「自分の人生は他ならぬ自分自身のためにある」と言っている。
シルビアさんの教えを的確に学び取る聡明さが彼にはあったのだ。
僕もかつての彼と同じように、人からの評価を気にして苦しくなってしまう質の人間だ。
本当にしょうもなくてみっともない話なのだが、その性質のせいで軽く死にかけた。
未だに依存的な性質は僕の中に根強く残っており、そのためよく期待と実情との板挟みで苦しくなる。
そんなときに思い出す言葉のひとつがこの、「ボクの人生はボクの人生はボクのためにあるんだからね!」というセリフだ。
自分のために決断し、自分のために断り、自分のために笑い、喋り、見て、歩いて、食べる。
自分の人生に自分で責任を持つということ。
それはとても心地よく、軽やかで楽しいものだった。
他者依存という名の魔物に捕まったとき……。まどろみの中で心地よい言葉を聞いたんだ。そうあれはマスク・ザ・ハンサムくんのものだった……。ボクを導くハンサムくんの言葉はまるで美しい愛のメロディーのようだった……。マスク・ザ・ハンサムくん、あなたは僕の愛の騎士だっ!
僕がこうして笑っていられるのも、シルビアさんとハンサムくんの熱い友情のおかげである。それに報いることこそ僕の使命!
さあ受け取ってくれ! この僕からのありったけのブログ記事を!
ああ………………。
僕ってば、今まさに輝いてる!
*ドラゴンクエスト11S公式サイト→【ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて S 公式サイト | SQUARE ENIX】
*シルビアさんプロフィール(ドラクエ11S公式サイト)→【シルビア | キャラクター | ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて S 公式サイト | SQUARE ENIX】
*シルビアさんの魅力を語った本ブログの別記事→【世界と相思相愛オネエさま! 『ドラゴンクエスト11』のシルビアさんを語りたい! - コボレ恥之介と 石の下でさざめく記事たち】
以下、余談。
・大会前は「一生ついていく」発言をした彼だが、残念ながらシルビアさんの魔王討伐の旅について行ったりしない。シルビアさんが何の目的で旅をしているかハンサムくんに教えなかったのかもしれない。かつての彼なら何であろうととにかく同行しようとしただろうが、「一生ついていく」というのが旅のお供になることだけでなく、彼女の意志を受け継ぎ行動することでもあると悟ったのだろう。頭いいなぁ……。
・もしくは前述の「復讐的なファンの子」のために残ったのかもしれない。彼女に「他者に依存するのをやめると幸せになれるよ!」と教えるために、幸せになっている今の自分を見せ続けてあげたかったのかもしれない。
・ちなみに僕は「ちょっと性格の悪い女の子キャラ」は大好きなので、この復讐的なファンの子も好きです。可愛い。
・ハンサムくんと言えば最も印象的なのが、過ぎ去りし時を求めた後の『シルビアさん……あんたはもう過去の男さ。今のボクはアラクラトロさま無しでは生きられない身体になってしまったんだよ!』というセリフ。少々滑稽にも映るが、ハンサムくんのキャラ性=「他者依存からの脱却」と考えると、実はちょっとハラハラさせるセリフ。完全に他者依存野郎に戻っちゃってますからね。
・3DS版のハンサムくん、タナトスハントのモーションがかっこいいぞ。
・赤目キャラはロマン。
・僕は普段は「僕」という一人称は使わないのですが、こうしてブログで使うとき、イメージしている人物のひとりがハンサムくん。ハンサムくんになりたいんですよ僕……。
いやアタシ、シルビアさんにもめちゃくちゃなりたいんだけどねん……?
↓さらにどうでもいい追記というか言いわけ
記事の執筆時点では11Sの情報がほとんどなかったから11時点の知識で「モブ」と表現したけど、11Sではそれなりにセリフももらっているようで。もうモブじゃない……? いや好きキャラフィルターかかってるだけで依然としてモブ?
どちらにせよ記事のコンセプト的には「モブ」って表現したほうが面白いし、そもそも11の感想記事だし。北米版だと明確なセリフは過ぎ去りし日を求めた後のひとつしかないですし……。すし…………。
まあ遅れてでも11Sは買うつもりなので……。そのときにまた判断します!(グダグダ!)