スケベで平和が作れるか?! 『謀略のパンツァー』第30話感想
「男女平等、ジェンダーフリーなパンツマンガ」って……何?
週刊少年チャンピオンで連載中のマンガ『謀略のパンツァー』(作者:古田朋大先生)にハマっています。
品行方正の生徒会長が、女子生徒のパンツを見るべく策略をめぐらす、変態頭脳派ラブコメディ。
【※ネタバレ注意※】
主人公・真澄(ますみ)レイくんの特徴は、『スケベで全員を笑顔にする』『そのために、誰も傷つけないための努力をする』というポリシーを掲げている点。
スカートをめくるためだけにわざわざめちゃくちゃデカイ鳥を手塩にかけて育てたりするような男だ。
更衣室を破壊して女生徒の着替えを見るという、一歩間違えれば大事故に繋がるやり方をする不届き者が出た際は憤慨し、真っ向から闘ったりもする。
対する女性陣もひと筋縄ではいかぬ猛者ばかり。風紀委員長のヒロインは『下着を見ようとする男を懲らしめるためにノーパンでいる』というトリッキーな覚悟の持ち主だし、「好きな男が他の女のパンツを見るための協力」を志願する女の子が出ちゃったり、好きな女のパンツを嗅ぐために退学になろうとする女の子が出てきたりもする。
こんな風に女性をスナック感覚で性的に消費しない形式が大好きで自分は愛読しているわけなのですが。
このマンガに実はある不満を抱く箇所があった。
それは『女性教諭のパンツを、男性教師の気を反らせるために利用したシーンがある』ことだ。
この問題は第8話、1巻後半に収録されている回にて発生した。
主人公の真澄くんは、ざっくり言うと何やかんやで購入した女性物のパンツが入った紙袋を、とある男性教諭に取られそうになった。この男性教諭は、熊のようなむさ苦しいおじさまをイメージしてほしい。
そんなときに出てきたのが、たまたま通りかかった女性教諭・月瀬先生。愛らしい顔立ちと、縦リブのセーター越しに伺えるセクシーなボディが特徴の養護教諭だ。
男性教諭の紙袋から気を反らせるため、真澄くんは月瀬先生のパンツを男性教諭に見せようと、月瀬先生を男性教諭の前で屈ませたのだ。
このシーンが実はちょっとショックだった。
ラッキースケベで平和にしたかったんじゃなかったのか? 嘘だったのか?
真澄くんも本当は女性を心の底では下に見ているから、女性のプライバシーを道具として利用してしまえるのではないか?
※そもそもパンツも見るなよって冷静なツッコミはなしだぞ。自分的にはマンガ的ハッタリとして捉えられる部分だから言及しないぞい。
他のマンガで例えるのは失礼かもしれないが、『DEATH NOTE』の第2話で月が利己心からL(※厳密にはLだと偽ってテレビ出演させた囚人)を殺そうとしたときと、同じくらいの切なさがあった。正義のために力を使うんじゃなかったのかよ、と。
商業誌の主人公のポリシーなんてしょせん詭弁で構わないのだ。展開さえ面白ければ信念だの何だのはどうでもいいことなのだ。そんな諦めが正直生まれていた。
しかし先週号(2019年9月12日発売の週刊少年チャンピオン第41号に掲載された第30話)にて、この不満は一気に晴れた!
「ラッキースケベ悪用問題」の被害者と思われた月瀬先生も、実はパンチラ愛好家だったのだ!!!!
彼女はたしかに名乗った。自分が「パンツァー」であると。パンツァーとは作中では「パンツを見る人」のことを指す。
つまりこの姉さん、純粋そうなお顔をしてスケベしちゃう側だったのだ。
『パンツァー=見られる覚悟を持つもの』と取れるセリフが作中にあった。
もしかすると真澄くんはどこかで何となく、無意識レベルに、『月瀬先生=パンツァー』と思っていたのでは? だから道具として利用したのでは?
前述の通り、真澄くんも女性は男性より下だと思っているから、彼女を道具として利用したんじゃないかという不安を自分は抱いていた。
でももしかしたら。同じ土俵に立つパンツァー同士で交わされる、無意識レベルの暗黙の了解のようなものを経て、作戦の駒として起用することを決めたんじゃないかと思った。
……もしかしたらいち読者の勝手な憶測にすぎないのかもしれないが、作者さまは初登場の時点で月瀬先生=パンツァーと考えた上で出していたのではないでしょうか。
第1話のカラー扉絵に主要なキャラがだいたい揃っていたことから推測するに、行き当たりばったりで描いていらっしゃるわけではないでしょうし。
「月瀬先生=パンツァーと無意識に勘づいていた説」も、あながち行きすぎた考えではないはずです。月瀬先生はことあるごとに出るキャラですし。
つまり何が言いたかったかと言うと。
真澄くんは女性を見下すような輩じゃなかったと推測できたので、安心した。
あとそういえばあのシーン、あそこで真澄くんが何もしないと学校を辞めることになる子がいたっけな……。
昨今、女性を性的に消費されるコンテンツは問題とされることが多い。自分もその部分にはとても敏感だ。
しかし『謀略のパンツァー』はどこまでも女性と男性の間に隔たりを作らないお色気マンガだ。
ちなみにだがこの「パンツァー」側に女性がいることももちろんのこと、「男性のパンツにしか興味のない男パンツァー」も存在している。ついでに男の娘のパンツも嗜んだりもする。
ジェンダーで優劣をつけないスケベマンガという、ジェンダーフリーを目指す現代社会において革命的な作品のひとつだと個人的には強く思う。
女性が性的に消費されないお色気マンガ。言葉にするのは簡単だけど、描くとなると本気で本気で本気で難しい。
主人公のポリシーを定めることは簡単だが、それに沿った行動を取らせることは難しい。そのポリシーを作品全体に反映させることはさらにさらにさらに困難だ。
……それを実行してしまうとは。プロマンガ家さんって、やっぱりすっっげー……。
……とか何とか色々言いましたけど、一番ハマっている理由はシンプルにめちゃくちゃ大好きな推しキャラがいるからなんですよ……。
身体に悩みを持っているけれどそれに屈さず自分のために行動する、生意気だけど愛らしい等身大ガールの男の娘・半田スズちゃんについては別記事で狂ったように述べると思うので、どうぞよろしくお願いいたします。
原作の激キュートな絵は本誌やコミックスで確認してくださいね!
*コミックス情報(試し読みあり!)→【謀略のパンツァー 第1巻 | 秋田書店】
*古田先生のPixiv→【朋大 - pixiv】
*古田先生のTwitter→【古田朋大@3巻11月8日発売 (@tomohiro_0109) on Twitter】
*半田スズちゃんについて語った別記事→【強い男の娘は好きですかッ!?『謀略のパンツァー』の推しを語る - コボレ恥之介と 石の下でさざめく記事たち】
……余談だけど、真澄くんの「誰も傷つけない」の「誰も」に自分も含まれてるのがいいよね。落ちたり転んだりするけど受け身を徹底してるし。
自分も怪我したからいいでしょ? みたいなメンヘラチックな開き直りをできないところが好感だよね……。
あと、この作品は『自分の意志で行う』ってことをとにかく重視してくださるのが素敵……。