コボレ恥之介と 石の下でさざめく記事たち

元・マンガ家志望。小説・映画・漫画の感想や表現技法の勉強、自作品の批評など。僕がアウトプットするためのブログです。

世界と相思相愛オネエさま! 『ドラゴンクエスト11』のシルビアさんを語りたい!

辛いときこそ、笑いましょ。辛くないときは、もっともっと笑いましょ。






……世界中のあちらこちらで黒煙が上がり、美しい建築物は一様に瓦礫と化し、空は獣の瞳のように赤くまがまがしく染まる。そしてたくさんの人が死にいたった。
悲しみと絶望が、世界を覆い尽くしていた。世界崩壊直後は、暗闇しか覚えていない。
このゲームは物語の中盤で、魔王によって世界が崩壊を迎える。


しかしそんな中で、奇怪な集団に主人公は遭遇する。集団はどの人物も、赤と黄緑で構成された派手な衣装を身に纏い、孔雀の羽のように大きく広がった羽飾りを背負っている。太鼓や笛を鳴らす者もいる。腰をくねらせ踊りながら、巨大な神輿を担いで炎の燻る黒い大地を陽気に闊歩する。
集団のリーダーである人物を見て、主人公はハッと息を呑んだ。
年は30代前半くらい。黒く滑らかな髪は後ろ髪が肩のあたりで外側に向けて跳ねている。その人物だけは他のメンバーと服装が異なっており、グレーと白の縦ストライプの、ノースリーブのトップスを纏っていた。トップスの裾は腰のあたりから色ごとに分かれており、タコ足のように広がっている。ノースリーブのトップスの中には真っ赤な長袖Tシャツを身につけており、それによって印象を派手なものへと変えている。
それは世界崩壊に伴ってはぐれてしまったはずの仲間のひとり・旅芸人のシルビアであった!
主人公を見つけてシルビアも喜び、長い睫毛に彩られた瞳を宝石のように煌めかせた。

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彼女はどうしてこんな世界が大変なときに、ふざけた集団を作って遊ぶようなことができたのだろうか? 世界なんてどうなろうと知ったこっちゃないのだろうか?
彼女は語る。
『暗い世界に光を照らすため、世界各地を練り歩いて世助けパレードをしていたの』



そう。絶望に打ちのめされて嘆くことなど選択せず、皆が笑顔になるために自分が今何ができるかを考えた。その結果がこの『世助けパレード』の構成となったのだ!

シルビアは人々を笑顔にするために旅芸人になり、その最中で出会った主人公が魔王の野望を阻止すべく闘っていると知るや否や「魔王に世界中の人々の笑顔を奪わせないために」と自ら志願して主人公の魔王退治へ向かう辛い旅路へ同行した。
彼女はどこまでも一貫して、「世界中を笑顔にするために」動いていたのだ!

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世界に光をもたらすべく躍動し続けるシルビア。
では世間の人々彼女とどう向きあっているのだろうか?

ここで、シルビアのキャラクター性について掘り下げさせていただこう。
先ほどまで僕はシルビアを示す二人称として「彼女」という言葉を使用した。これはシルビアが作中で自身を「女」と称したことに由来する。
だがシルビアは仲間のひとりから「シルビアのおっさん」と呼ばれたり、通りすがりの吟遊詩人から「あの男」と言われたり、実の父親からは「息子」との表現をされている。

彼女は身体的には男性だが心は女性のキャラクターである、と申し上げるのが最も簡潔な説明だろう。
ただ本人は自分が男性でもあると自覚しているような描写もある(ドラクエシリーズの別ゲームに登場した際水着になったが、胸は隠していなかったなど)。男とも女とも言われても否定はしないので、男でも女でもある存在、あるいは男でも女でもない存在、もしくは性別がシルビアである存在……。Xジェンダーと呼ばれる性自認が最適だと僕は捉えさせていただいている。

さて何故わざわざ性自認の話をしたかといえば、少数派というのは悲しいことに一定の割りあいで差別の対象となってしまうからである。
閲覧者さまの中に当事者さんがおられたら失礼にあたるかもしれないが、その観点から話を進めさせていただこう。



辛いことだが、シルビアがいかに差別を受けてしまったかについて言及せねばならない。
オカマいじりをどれほどされてしまったか、苦しみながらも挙げ列ねばならない。
シルビアが作中で受けてしまった差別的発言や言動。それはなんと…………




0である。




エッ、0???????

そう。
シルビアさんは!!!

オカマいじりを一切されません!!!!!!!!

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いや待て、先ほど「仲間からおっさん呼ばわりされる」と言ったばかりではなかったか。

この発言をするのはカミュという名の元・盗賊の少年。
彼はシルビアに対し「これだから女は困るんだ」という風に、「シルビア=女」とも認識している発言もしている。「シルビアのおっさん」という呼び方は「おっさんなのに女性ぶってて変!」などという揶揄の文脈で発生したものではまったくない。「シルビア=男性でもあり女性でもある年上の人」という彼女のありのままを受け取った上での発言なのだ。

父親との仲違いシーンもあったが、争点はセクシャリティでなく「自分の芸で、世界を笑顔にする」という信念に対する言及の一点のみであった。

ちなみにこの記事のタイトルに「オネエさま」と使ったのもオカマいじりでは決してなく、前述の『世助けパレード』のメンバーが彼女を呼ぶ際に使用するものを使わせてもらったためです。シルビアさんが組織した団体なので、オネエさま呼びはシルビアさんはむしろ推奨しているようにすら思われる。


そうなのだ。
いらないのだ。

セクシャルマイノリティー=LGBTsの方々の割りあいは日本人の12人に1人ほどであると聞いたことがある。12:1という比率は右利きと左利きの比率、またはA型+B型+O型:AB型とだいたい同じらしい。この知識からは差別がいかに馬鹿馬鹿しいものであるかが伺える。

彼女は当たり前の扱いをされているだけなのだ。
しかしながら現代日本において、まだ少数派のセクシャリティの方々に対する偏見のようなものは、多少なりとも残存しているように僕は思う。だからこそ声高に皆さまが訴えてくださっているわけですし。あとほんの3年ほど前に僕も、差別的とも取れる作品を描いてしまったし…………。その作品は封印させていただきましたが……。


セクシャリティに限らず、「人と違う部分がある」というだけで社会から排除せんとする性質が人類から消えることはないだろう。安全欲求に基づいた行動なのだろうし(排除対象者となった危険か否かは別にして)。僕もたぶん無意識に、あるいは意識的に、不当な排除を行なっている。
だからこそ当然の扱いをしてもらえるということは、それはそれで「愛されている」ということに他ならないと僕は思う。

彼女が世界を愛したから、世界も彼女を愛したのか。
それとも世界が先に彼女を愛し、彼女は世界を愛せる人になれたのか。

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優しくて力強くて真っ直ぐで真面目でお茶目で明るく元気なシルビアさんが僕は大好きだ!
ドラクエ11Sではそんな彼女のことをもっと詳しく知ることができるようだ。今から楽しみである。

……まぁ、まず僕はSwitchを買うところからなのだけれど……!!!

 

 

*ゲーム公式サイト→【ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて S 公式サイト | SQUARE ENIX

 

*シルビアさんの声が拝聴できるページ(公式サイト内)→【https://www.dq11.jp/s/characters/silvia.html

 

*本ブログにて、マスク・ザ・ハンサムくん(作品内に登場する、シルビアさんのファン)について語った記事→【ドラクエのモブに教わる生き方って何?! 『ドラゴンクエスト11 』推しを語る - コボレ恥之介と 石の下でさざめく記事たち

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……余談ですが、ドラクエ11性役割の排除が素晴らしい点についても言及。
呪文を一切使えず腕っぷしだけで乗り切る脳筋キャラはマルティナさまという女性キャラだし、敵にとらわれるポジションをカミュという少年が2度も当てられた。
誰もが心地よく楽しめる作り方をしている点がこのゲームの素晴らしいところである……。

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