コボレ恥之介と 石の下でさざめく記事たち

元・マンガ家志望。小説・映画・漫画の感想や表現技法の勉強、自作品の批評など。僕がアウトプットするためのブログです。

プロとはプロのことである!『天気の子』から物語・作画・演出を学びたい

誰のために行動するか? その答え次第では世界など見捨てて構わぬ存在になる!

 

【※ネタバレ注意※】

 

 

 


『天気の子』(新海誠監督)拝見しました。


まず感動したのはビッグマック。箱を開けた瞬間にふわりと膨らむ様はバーガーの美味しさとともにシーンの重要性を表現したように見えた。
とにかく作画は美しかった。やはり天気=風景=作画が最重要といえる作品なのだと思った。画面から雨の匂いがした。僕は気づかずに4D映画のチケットを買っていたのだろうか。そうに違いない。
そしてアクセサリー売り場の店員のリボンの!人! 気づきました??!?? この子はまさか?と思ったら、エンドロールを拝見して「やっぱそうか!」と興奮。オタクの心理を分かっておられる!

 

主人公が島を出た理由は「何となくいや」以上のものがなかった。が、その程度にも関わらず意地になって暴れまわるところは、若さによる躍動感をよく描いていらっしゃった。いやもちろん彼にも苦しい過去があるのだろうが、私なら「代々続く医者の家系で云々で〜などと理由を明示してしまうに違いない。多感な時期なのだ、自分が何に不満を感じているかを明確に理解していない子も多いだろう。そのリアリティに感激した。
そもそも大事なのは 「過去何があったかでなく、今どうするか」なのである!作品にせよ、生き方にせよ。僕は漫画家を目指して活動していた経歴があるのだが、そのときよく「回想シーンは最低限にせよ」と言われたし。

積乱雲の中に魚がいてもおかしくないという理論には納得してしまった。生命の誕生に不可欠な水という存在があれだけ固まっているのだ。生き物がいないほうがおかしいのかもしれない。

誰の死も(少なくとも明確には)描かないのもよかった。安心して見れる。僕のような素人は死者を描かねば物語は深まらないと思ってしまう。


鳥居、昔の絵、老人、記者など視覚的・行動的な情報の出し方がとにかく上手い。物語作りのノウハウが詰まっていたように思う。勉強になった。

「晴れ」の描き方も2種類あったかと思う。最初の「人を幸せにする晴れ」はビルなどの反射光が虹色に輝いていて美しい。が、後半の「幸福でない晴れ」は光のフィルターを乗せただけのような物足りない晴れ方だった。景色を描き分けられるのかっ? プロはすごい! プロはやはりプロなのだっ!

 

 

 

『自分の幸福のためなら、世界など見捨てて構わない。なぜなら世界には、君に順応する能力があるからだ』

ひと言でまとめると僕の得た一番の気づきはこうである。周りの人より自分が今どうしたいかを重視すること。
……さてここで僕が言及したいのは、冒頭でも述べた「誰のために行動するか?」ということである。
この物語で、ヒロイン・陽菜さん「主人公・穂高が雨を止んでほしいと言ったから、彼のために自らを犠牲にして晴れにした」と僕は解釈した。しかし大逃走劇の末に穂高は陽菜さんのところへ辿り着いたとき、彼は彼女に「君がいれば世界が晴れなくても構わない」「自分のために祈って」と声をかけた。そしてハッピーエンドへ向けて話は結ばれていく。
このことから「自分のために行動しろ」というメッセージが読み取れる。


さて。ここで気になる点がある。
穂高は陽菜さんのために行動したのではないか?メッセージと矛盾してはいないだろうか?」

この問いに対し、僕は彼の逃走劇の中で出たセリフを用いて回答しようと思う。
「陽奈さんの笑顔を見たいから」
つまるところ彼は「陽菜さんのために」行動したのでなく、「陽菜さんの笑顔を見たいと思う、自分のために」行動したのだ。


例えば彼が「陽菜さんの笑顔より晴れの空を見たい!」と思うなら、この作品のメッセージから逆算すれば、陽菜さんを見捨てて晴天を取って構わないのである。

……しかし穂高の過去は何も明かされていないものの、感動ポイントから逆算すると、人の顔色を伺い続けていたことは容易に想像がつきますね。「息苦しい」って、「自分のために行動できない」ってことなんだろうし。真面目だとよく言われていたし。
「過去が明示されていないから薄っぺらい」という意見もあるようですが、僕個人としては彼の過去ってかなり示されているんじゃないかと思います。もちろん「情報を明確にすること」も大事だと思うので、否定するつもりはございません。

 

『自分のために行動しよう。世界の順応力を信じよう』


素晴らしいメッセージのこもった映画でした。

 

*映画公式HP:【映画『天気の子』公式サイト

 

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