コボレ恥之介と 石の下でさざめく記事たち

元・マンガ家志望。小説・映画・漫画の感想や表現技法の勉強、自作品の批評など。僕がアウトプットするためのブログです。

【読書感想文集】青春キラキラ読書健康法

「青春」「健康」という言葉を感じる本を続けて読んだ気がします。スポーツに合唱コンクール。友情モノ。医療モノ。幸せをテーマにした本もありましたっけ。
やはり元気は万物の源だ。

以下、拝読本の感想まとめです。

 

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◆『シャカリキ!(丹沢まなぶさん、原作:曽田正人さん、小学館文庫)

教授くんが好きだ。自転車に乗れない身体だが、好きという真っ直ぐな気持ちを大切にし、自転車部のサポート役に徹する彼。かなりかっこいいと思う。主人公を信じ、主人公のために走ったシーンは応援したくなった。怪我してでもホイルを守り、血を流しながらも笑う姿が凛々しい。他の選手ももちろんだが、彼なくしてはあの闘いは生まれなかった。

自転車を奪おうとする母に対しショーグンが放った、「おれから足をもごうって言うのか!」というセリフも印象深かった。自転車は彼の一部。この母親にとってショーグンは、母親の遊び道具だったのだろうかもしれない。だからこそ自転車とホビーと呼べたのだろうな。
ラスト。ショーグンの母の心境変化に安心感。ヒロインは後半で、自分もショーグンの母と同じように「自転車=遊び」だと思っていたと明かす。そう考えてしまうことにおかしな点は何もない。だって分からないし。本気かどうかなんて。ただ、無理に取り上げようとしなかった。そこが大事だった。

後半の坂のシーン、泣きましたね。かつての友が応援してくれるところね。小説で泣いたのはかなり久しぶり。(読書に当てる時間は待ち時間や電車の中が多いから、基本は泣くに泣けない。この本を家で読むことにしたのはラッキーだった)
「チームメイト=自分の分身」という言葉はよかった。
スポーツに苦手意識を持つ僕にとって、スポーツの見方を変えてくれた本だった。前よりスポーツものを楽しめる人間になれた気がする

 

 

 

 

 

アンソロジー『あなたに、大切な香りの記憶はありますか?』(文春文庫)

 

『何も起きなかった』(著:高樹のぶ子さん)が印象的な香りのする話だった。


「線香花火の火の玉が、ぼとりと落ちたときの、懐かしいような、じっと一点を見続けていたいような、火薬の匂いだと言えます。秘密の情事は。触れれば火傷しますが、夢の中においておけば、いつまでも小さな火花が、チリチリと保たれているような。それは相手の男が残したものでなく、もっと遠い、高校時代の記憶から来たもの。ですから、その女性(※=私)を許してあげてください」


親友の夫と不倫して、淡いひと夏の思い出のように不倫の事実を親友に告げるヒロイン。許せとまで言う。恐ろしい。
しかし情事のとき、男の首元から親友を思わせる香りが漂い、ヒロインが男の妻(=親友)に傍で見下ろされているように感じた。
香りとは、生々しくて、それでいて幻想的。不思議な魅力を持っていると感じた。

 

 

 

 


◆『くちびるに歌を中田永一さん、小学館

 

清純、幸福、青春、健康、綺麗。そんな印象の話だった。
亡くなった母から受けた言葉を忘れた少女が、その言葉に再び出会ったシーンが感動的。愛情深いシーン。その言葉を再度届けた人物は、そこにこめられた愛を感じたから、その言葉を覚えていたに違いない。

 

 

 

 

 

◆アンソロジー『キラキラデイズ』新潮文庫

 

『螢万華鏡』(寮美千子さん)で、「じゃんけんに負けて自分は自分として生まれてきた」と語るホタルに対し、ヒカルが思った言葉が優しかった。
『ホタル。きみはじゃんけんに負けたんじゃない。勝って、そんな素敵なきみに生まれてきたんだ』

 

 

 

 


アンソロジー『Happy Box』PHP文芸文庫)

 

すべての話がよかった!


『Weather』(伊坂幸太郎さん)、浮気性の男と仲いいことで主人公の男性が天気雑学が得意になったのは面白い! オチも意外。
『天使』(山本幸久さん)、スリ師おばあちゃんの話。「人の幸せをもらってるから感謝が必要」という持論が面白い。
『ふりだしに進む』(中山智幸さん)、惚れ惚れする文章力! 「来世のことなんてシんでからで間に合う」というセリフに開放感。
『ハッピーエンドの掟』(真梨幸子さん)、普通の幸せとやらを押しつける周囲の独善的な態度が生々しい!
『幸せな死神』(小路幸也さん)、幸せを感じることのない死神が「私は今、幸せです」と言ったシーンに感動。「私は今幸せ」そう言える人、僕はすごく大好きだ。

 


◆『極選・板谷番付!』ゲッツ板谷さん、角川文庫)

 

板谷さんの使う「ボキ」という一人称は、昔好きだった某ゲームの敵キャラを思い出させた。ターゲット層の低いゲームだったので作品名は出さないが。そのキャラクターの一人称も「ボキ」で、丸みを帯びたボディが特徴の少年だった。食べるのが大好きだが、空腹になると誰彼構わず暴力を振るうキャラクター。あのキャラが大人になったら、こんな風になるのだろうか。……。
特徴的な喋り方をなさる人は、他では味わえない想像をもたらしてくれる。

 

短編集『恐怖の報酬』赤川次郎さん、角川ホラー文庫

『使い走り』の、ある人物の成長がよかった。この人の話をもっと見たい。この後の話も、これより前の話も。

 

 

 

 


短編集『救命センター「カルテの真実」』(浜辺祐一さん、集英社文庫
孤独死』が印象的。孤独死も、案外いいシに方なのではという見解に、お恥ずかしながら目から鱗
本書の主張内容とは少し違うかもしれないが、孤独死は健康であるがゆえに訪れる死とも言えるから、……。

 


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◆『シャカリキ!』→【https://www.amazon.co.jp/dp/4094082859/ref=cm_sw_em_r_mt_awdo_gglzEbMW54GHX

 

◆『あなたに、大切な香りの記憶はありますか?』→【文春文庫『あなたに、大切な香りの記憶はありますか?』阿川佐和子 石田衣良 角田光代 熊谷達也 小池真理子 重松 清 朱川湊人 高樹のぶ子 | 文庫 - 文藝春秋BOOKS

 

◆『くちびるに歌を』→【くちびるに歌を | 小学館

 

◆『キラキラデイズ』→【https://www.amazon.co.jp/dp/4101270457/ref=cm_sw_em_r_mt_awdo_rklzEb0XS9WYY

 

◆『Happy Box』→【https://www.amazon.co.jp/dp/4569764541/ref=cm_sw_em_r_mt_awdo_znlzEbKT37WCW

 

◆『極選・板谷番付!』→【極選・板谷番付! ゲッツ 板谷:文庫 | KADOKAWA

 

◆『恐怖の報酬』→【恐怖の報酬 赤川 次郎:文庫 | KADOKAWA

 

◆『救命センター「カルテの真実」』→【救命センター「カルテの真実」/浜辺 祐一 | 集英社の本 公式