人生はドラクエだ？！ 『幸せになる勇気』感想

『まさに、まさに日々が試練ですよ！！』

最近、僕はある気づきを得た。
それは道の端で生える平凡な形の雑草のように、とても些細なことである。それでいて龍の轟のごとく勇ましく荒々しい、大変ファンタスティックなことである。

 
矛盾に満ちたその気づき。
それはつまり、「何てことない日々を過ごすことが実は一番難しい」ということだ。

最初その疑念を抱いたとき、「まさかそんなことがあるものか」と思った。
だがしかし、日々を振り返るとそれはたちどころに真実の光を帯びてくるものだった。

例えばダイエット。頭の中でクッキーやチョコレートや煎餅やカスタードプリンやスイートポテトが明滅を繰り返す中で、日々我慢をしなければならない。
例えば運動。面倒で億劫で仕方がないのに、毎日継続して運動靴で地面を蹴り、坂を登ったり階段を駆け上がったりせねばならない。

それだけではない。満員電車にぎゅうぎゅうに押し詰められ、上ずった声で会社の電話に応対して、午後の眠気と闘い、明日の昼食を用意し、夜更かしの誘惑を擦り抜けて7時間の睡眠時間を確保せねばならない。
掃除をせねば床は汚れるし、炒めねば生肉は食えないし、洗わない風呂はカビが生える。

そう。

日々を生きるということは、実に面倒なことの積み重ねなのである。

かの有名なベストセラー『嫌われる勇気』。その続巻にあたる『幸せになる勇気』（岸見一郎さん・古賀史健さん、ダイヤモンド社）には、「なんでもない日々」について驚きの記述が存在する。

『世界はシンプルであり、人生もまた同じである。しかし、シンプルであり続けることは困難であり、そこでは日々が試練となる』

そう。ただ毎日を過ごすということは、困難な試練に違いないのだ。

そしてまた、書にはこうも書かれている。

『しばしば人は「最初の一歩」が大切だと言います。しかし、実際の人生は、なんでもない日々という試練は、「最初の一歩」を踏み出したあとからはじまります。

ほんとうに試されるのは、歩み続けることの勇気なのです』



……ああどうして人は、日々という試練の中でしか生きられないのだろうっ！
どうして苦難の中でのみ呼吸をすることが許されているのだろう！

その気づきは、僕の足を折るのに十分な衝撃であった。

しかし不思議なことに、傷んだ足を癒すのも同時にその気づきであった。

そう、日々というのはそもそも難しいものなのだ。
昨日上手く行かなかった事柄も、今日石に躓いて転んだことも、明日犯すであろう大失態も、全ては存在し得るものなのだ。存在して然るべきものなのだ。
試練とは困難に満ちた道のりのことである。故に、困難はあって当然のものなのだ。

失敗を恐れず踏み出す勇気。災厄に慄かず歩む勇気。嫌われ、裏切られ、妬まれ、奪われ、それでもこの世界と共に生き続ける覚悟。

それを人は「幸せになる勇気」と呼ぶのだろう。

さて。

ここで話は『幸せになる勇気』から逸れますが。

大人気RPG『ドラゴンクエスト』シリーズ（スクウェア・エニックス）。

このゲーム、タイトルによってはラスボスがドラゴンじゃないものも多いと伺います。

（※ドラクエは11と5しかまだできていないのでこんな言い方になってしまう）

じゃあ何でタイトルがドラゴンなんじゃ、タイトル詐欺やろがい！　と思っておりましたが、これはきっと「ドラゴンのごとく大きな試練」という意味なのだと気づきました。

それを表してか、端の端にいる名もなきキャラクターもそれぞれ目標や課題を持って生きていますよね。

仕事を失い、酒浸りになってしまった父親と、それを心配する息子。

世界中のダンスを習得すべく旅する踊り子は、雪国の異常気象に襲われる。

お姫さまになる夢を持つ幼い少女の前で、両親は天変地異に見舞われた世界でどこへ逃げるべきかを真剣に話しあっている。

……あのゲームはどのキャラクターもが「ドラゴンのごとく立ち塞がる試練」を持って、それでも前に歩もうとするお話なんだと思います。

まあ「バニーガールが見たいなぁ〜」というような、ごく小さな試練と対峙するキャラクターもたくさんおりますが……！

  
さて。

現在時刻は午前6時54分。
7時になったら僕は鞄に握りたてのおにぎりを二つ入れて、電車に乗るため家を出る。

さあ一日の始まりだ。
何気ない日々の始まりだ。

強大な龍を倒す、大いなる試練の始まりだ。

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＊『幸せになる勇気』詳細（出版社公式サイト）→【幸せになる勇気 | 書籍 | ダイヤモンド社】

＊『嫌われる勇気』詳細→【嫌われる勇気 | 書籍 | ダイヤモンド社】

＊『ドラゴンクエスト』とは？（スクエニ公式サイトの解説）→【ドラゴンクエストとは | ドラクエ・パラダイス(ドラパラ)ドラゴンクエスト公式サイト | SQUARE ENIX】

＊『ドラゴンクエストⅪ　過ぎ去りし時を求めて　S』→【ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて S 公式サイト | SQUARE ENIX】

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……ちなみに例として紹介したモブの話は、全てドラクエ11Sに登場する、名もなきキャラクター達です。たぶん細かすぎるのでどこにいたどの人物かお分かりになる方は少ないかと思いますが、もし「このキャラってここにいたキャラでは？」とお思いの方がいらしたら、あなたさまは立派なモブマニア。握手しましょう。
それ以外にも推しモブがいらっしゃる方は、是非とも僕に教えてくださいね。僕は重度のモブマニア。

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